2025年版 世界経済チャートで読む米国覇権の終焉とリスク管理[2025.5.16]

Market情報

みなさん、こんにちは。各種情勢から、要約版をやさしくかみ砕いてお届けします。世界経済の潮流をつかむためのポイントをまとめましたので、ぜひ最後までチェックしていただけるとうれしいです!


要点

ポイントは4つ

1. 米国の関税政策の影響

    短期的には「駆込み需要→その反動減」を伴い、1~2年程度で家計・企業の購買力低下を通じた需要停滞、長期的には再構築された非効率なサプライチェーンによる潜在成長率低下をもたらす。政策変更の不確実性が増すほど投資・採用は先送りに。

    2. 先行指標の悪化

    経済活動に6ヵ月ほど先行する主要先進国の家計・企業向けサーベイ指数が3~4月に大幅低下し、関税のネガティブな影響の深刻さを示唆。

    3. 駆込み需要の限界

    駆込み需要が強いほど、その反動減も大きい。米国や先進国の輸出・受注回復は一時的で、新たな景気拡大エンジンとは言えない状況。

    4. 米国の景気先行指数

    家計・企業向けサーベイ悪化を受け、3月まで3ヵ月連続の前月比低下。実体経済悪化は「2025年後半以降」が本番と想定されている。


    景気循環の指標から見る「今」を考察

    • OECD景気先行指数

    G10・EM7など先進国・新興国を含む広範囲で、2000年以降の水準を大きく下回り、
    リセッション懸念が根強い。

    • PMI(製造業/サービス業)

    世界・先進国ともに50を下回る時期が増え、3~4月の落ち込みは無視できない。

    • 製造業新規受注・稼働率

    駆込み需要で一時的に持ち直しているものの、長期的なトレンドは低迷傾向。

    こうした「サーベイ系指標」の悪化は、6~12ヵ月後の実体経済にもつながるため、先行きには要注意です。


    資本主義の終焉──成長フロンティアの消失

    • 2008年以降の転換点
      90年代~00年代前半はEM台頭や旧東欧のWTO参加、ユーロ創設などで成長フロンティアが拡大したが、GFC後は閉鎖経済レジームへの移行で限界が露呈。
    • 信用創造への制約
      「不換紙幣レジーム(信用創造青天井)」→「準ハードカレンシーレジーム(金融規制強化)」へ逆戻りし、マネー拡大が抑えられる環境に。
    • 投資機会の枯渇
      低金利でも割高感のある投資先しかなく、潜在成長率や自然利子率は低下傾向。パンデミックも追い打ちとなった。
    • 兆候一覧
      1) 世界貿易伸び鈍化 2) 先進国企業の余剰資金膨張 3) 固定資本形成率低下 4) 労働生産性鈍化 など

    このままでは、大規模QEや低金利の副作用で「株価と実体経済の乖離」がさらに進むリスクがある。


    米国覇権終焉の兆候

    「米国覇権の終焉」をめぐる象徴的イベントと数字

    • 政治・安全保障面
      ウクライナ決議での反対票、ゼレンスキー大統領への公然批判など、米国第一主義・孤立主義への転換が鮮明
    • 基軸通貨USDの信認低下
      経常赤字/GDPの肥大化、所得収支黒字→赤字転換、外貨準備に占めるUSD比率低下、非居住者の米国債保有頭打ち…など、米国が“普通の先進国”へと向かうマーカーが散見される
    • 財政・R&D投資の弱体化
      連邦政府の研究開発投資や大学助成の大幅削減が、STEM人材流出と潜在成長率低下を招く危険性
    • 関税政策の逆効果
      関税は米国ではインフレ的、他国ではディスインフレ的。輸入物価10%上昇でCPI+3.2%の試算など、世界貿易を収縮させる懸念

    レジームシフト──閉鎖経済・準ハードカレンシーへ

    これまでの「世界金利レジーム」が解消され、

    • 閉鎖経済レジーム:貿易依存度低下・資本移動制約
    • 準ハードカレンシーレジーム:信用創造への強い制約

    へと移行中。COVID-19以降は、こうした構造的大転換が一層鮮明に。政府介入強化やグリーン投資の一過性インフレショックなども合わせて、今後の金融政策・財政運営の舵取りは以前にも増して難しくなりそうです。


    マーケットへのインプリケーション

    最後に、こうした潮流が金融市場にどう影響するか。キーワードを挙げると…

    • 配当利回り>10年債利回り:株式が「準債券化」しやすい環境
    • 名目GDP成長率>10年債利回り:資産価格を支える重要条件
    • 財政脆弱度指数:米国を含む先進国で高まる警戒水準
    • 金融ストレス指数の上昇リスク:+1σ超えで金融システム不安の芽生えへ

    特に「名目成長率 vs. 長期金利」の逆転は、過去700年ぶりの“19世紀後半並み”とも指摘され、投資家にとって無視できない要素と言えます。


    ポスト・ヘゲモニー時代をどう生きるか

    米国覇権の相対的低下、資本主義「成熟化」に伴う成長機会の縮小、COVID以降のレジームシフト──。こうした潮流は一夜にして変わるものではありませんが、中長期の投資戦略やリスク管理には欠かせない視点です。

    • 分散投資・資産配分の見直し
    • ヘッジ戦略の強化(為替・金利・クレジット)
    • 成長フロンティアを求める新興市場の選別

    …といった対応が求められるでしょう。今こそ「金融市場へのインプリケーション」をしっかり押さえ、ポスト・ヘゲモニー時代を乗り切るヒントを探したいですね。

    参考文献:SBI証券 経済企業調査部「SBI 世界経済チャート集:米国覇権の終焉と金融市場へのインプリケーション」

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